獄中記[岩波現代文庫]

獄中記
文庫本で出ているのを見つけて先週即買いした。ここ二日間ほど、移動時間が多く、読書の時間が取れたので貪るように読み進めた。
前半部、3章までを読了。あまりに分量が多いのでこの辺で一度書き留めておく。
文庫版あとがきまでを含めると599ページ。分量が多い、が、希代のインテリジェンス伝道師こと佐藤優が東京拘置所に収監された500日を越える日々の記録と考えると分量がこれでも少ない気がする。
驚くべきは、その読書量だろう。拘置所の独房を勉強するには最高の環境だ(なんて、図太い神経だ)と言い張り、保釈を求めず、自らの勉強用の部屋として「活用」している。持ち込める本の数に制限があるせいか、習得に時間がかかる語学系の本や、専門書(神学、哲学、ほかマルクスや)、歴史書太平記を読破していた。彼の著作によく出てくる南北朝の云々、というくだりはこの時期に形成されたのか、と気づく)をチョイスしているところも興味深い。一連の佐藤本を読んでる人には、なるほど、この時期に仕入れたのか、とニヤリとする場面もあるのではないだろうか。(でも、一連の佐藤本を追いかけてる人は、文庫本まで待たないか)
これまで読んだ感じでは、手っ取り早くまとめると「作家・『佐藤優』のレシピ」としても読める。この本に書いてあることと同じことをすれば佐藤優のような作家として動けるだろうが、まぁ一般人には不可能だ。彼の知識のバックグラウンドは計り知れないほどに広い(まず外交官としての下地が普通の人には作れない)。その広大なグラウンドをさらに広げようと知識の筋トレのような行為を喜んでやっているのだ。この知的好奇心へのハングリーさは並ではない。


書き留めて置きたいことは他にもあるが、まだ途中なので、これまでで気に入った一節を一つだけ


日本の外交官(そしてその集団である外務省)は(おそらく過去50年以上戦争のような修羅場をくぐっていないせいと思いますが)弱すぎます。特に以下の点にその弱さを感じます。
1.秘密を守れない。口が軽すぎる。
2.自己顕示欲が強く、組織人として行動できない(その裏返しとして、出世街道から外れると、イジけたひねくれ者になる)
3.語学力が弱く、十分な意思疎通ができない
4.人国事情や一般教養に疎く、任国エリートから相手にされない
5.人情の機微をつかむことができず、人脈を作れない
6.セクハラが横行しているため、女性外交官の能力を活用し切れていない。
獄中記 第3章 10月23日(163日目)弁護団への手紙−92より引用
これについては別に外交官に限った話ではないように思える。