31年ぶりにムショを出た―私と過ごした1000人の殺人者たち

31年ぶりにムショを出た―私と過ごした1000人の殺人者たち
先週本屋で見つけて、今日読了。まずは、本書を記した著者と、出版をした勇気に拍手を送りたい。
何とも言えない読後感になる。決してよいものではない。とはいえ、本書の最後にある「私(著者)の起こした過ちによって迷惑をかけた人への贖罪のために残された時間を使いたい」という言葉は心に残る。重い。間違いなく、人の道を外してはいけないんだ、という気持ちになる。


現実を知るものの実感のこもった言葉には迫力がある、というのはこの著者が殺人という罪を犯しているということよりも、「無期懲役」という終わりのない悪夢のあまりに強烈さ、さらにそこから抜け出たという、その現実に迫力を感じるのである。著者は無期懲役から現世に戻った数少ない経験者であり、全く知らなかったが、刑法が有期刑の上限を30年に引き延ばした今、無期懲役と処された人が30年より早く出ることはない(刑が確定したのが20数年前であっても、今30年未満で仮釈放されるのは絶望的なのだそうだ)、、裁判員制度による厳罰化が増えるであろう、、とはいえ、裁判官制度では死刑は増えないであろう、、というこれらの現実を考えると、、それが、なんともやりきれない気持ちの正体なのか。これに本書で述べられる懲役者のエピソードが入ると、本当になんとも言えない気持ちになる。
決して万人に勧められる本ではないが、ただ、ここ最近読んだ本の中ではインパクトが抜群にすごかったのは事実だ。