FUKUSHIMAレポート〜原発事故の本質〜


他の章も読ませる内容が多いが、1章が最も衝撃的な内容で、本書でしか知りえなかった話が次から次へと出てくる。ECCS,RCIC,ICの説明を本書を読んで初めて理解できました。
特に「日比野靖の証言」が重要な意味を持つ。
内閣参与を務めた人の声というのは本当に貴重な情報で、実名で出すのは大変勇気がいることだと思う。
彼の証言から菅は、首相としてどういう仕事をしていたか伺い知ることができる。当然、言えることのみを選んでいっているのだろうが、e_c_e_tは思ったよりまともな仕事をしていたのだな、と、思った。東電幹部ほか、原子力村の方がマスコミを味方につける術を持っていた点が、今の評価につながっているのだろう。
1章では、東電の「技術経営」という言葉を使って東電の経営者側の責任を追求している。この結果(経営責任を問う)は賛同できるが経営サイドが技術に長じているべきというのは幻想だろう。決済の判子を押した責任を問う、というのならわかる。雇った専門家のチョイスを間違えた責任を問うというのでも、わかる。でも、経営者が物理を知っておくべき、という意見には違和感を感じる。経営責任を問うならば、廃炉決定の決断が遅れたことで充分ではないだろうか。
既に蓮池透氏の指摘にあったが、東電にとって、3/11以前の福島原発減価償却が終わっていて、多額の固定資産税を払わずに稼働が見込めるドル箱だった点は見逃してはいけない。ある意味では、固定資産税という仕組みが原発のような巨大構造物を何十年も使い続け、老朽化を招く要因となっていることを考えると、国の責任もあるように思う。


話がそれた。本書は、本当に多角的に事故の本質に迫っている。公開情報を非常に上手に読み取っている。オシントとはこういうことか、と、蒙を啓く思いがした。正直なところ、ほぼ毎日公表される東電や保安院の報告書を全部目を通して分析をするなんて、自分ではできない。そういう人のためにこの本はある。なかなかお買い得な本だと思う。