のぼうの城

数年前、陰陽師という映画を見た。
野村萬斎のイメージはそこで決まった。変な動きをする男だ。喋り方が何か引っかかる。最後、真田広之と「お前は本当に良い男だ」「お前もな」と笑い合って終わる。やっと、終わったかと思ったら、エンディングでは萬斎の舞を延々と見さされる、という、陰陽師の世界観とはこういうものか、平安時代のカルトムービーだからね。まぁ、これもありか。
と、思った記憶がある。軽いトラウマだ。


時は流れ、のぼうの城だ。
予備知識なしで、原作は読まないで見に行った。主演が野村萬斎だとは知らなかった。映画館に着くまで。一瞬、冒頭の陰陽師を思い出したが、監督の犬童一心を信じろ。と、己を説得しチケットを買う。
結果、ストーリーはすばらしい。弱者が知恵を絞り強者をくじく。使い古されたフォーマットと言うなかれ、見るものに希望を抱かせる素晴らしい話だと思った。エンディングで現在の忍城周辺の地理を映すのは面白い。普通に見れば、埼玉県行田市だが、この映画の後ではその景色と標識が意味を持つ。本当に面白い映画だった。
野村萬斎(と榮倉奈々)以外は。
石田三成の2万の兵に囲まれ、水攻めにもあって絶体絶命の状況で、萬斎の踊りが民を救うという、超展開。オーディエンスを引きつけるその踊りは見事だが、萬斎は踊らずにはおられないのか、敵を踊らせる必要はあるのか、ストーリーは素晴らしいのだから、普通に演技して欲しい。キャラクターを出したいのはわかるが、狂言と言うツールは果たしてこの映画にプラスに働いたのか。
見に行った後に、原作でもそうなのか?と、思わされる映画は初めてだ。
そういうわけで、原作が読みたくなった。
今読みたい本は「のぼうの城」です。