It worked for me

リーダーを目指す人の心得 コリン・パウエル著 トニー・コルツ著
著者が二人いることに疑問符がつくが、これは間違いなくコリン・パウエルの自叙伝です。
本書のタイトルは、自己啓発的なニュアンスがあるが、原著のタイトル「It Worked for Me: In Life and Leadership」の方が本書の内容をうまく表しているように思う。かなり言葉を選んでいるが、語っているエピソードでは怒りまくっている。部下は大変だったのではないだろうか。それでも、組織のなかで生きぬく「正解」の一つが本書には書いてある。当然、答えは一つとは限らないし、パウエル自身もそれはよくわかっているからこそ「It worked for me」なのだろう。
この人はブッシュ政権の印象が強いが、意外にもレーガン時代に既に政府組織で働いていた話が書かれており、その章が一番印象に強く残った。随分とレーガンが優秀な大統領だったのだなと、納得できた。
大変示唆に富む、素晴らしい本でした。陸軍出身なので、軍の話が多いが、組織のなかでの生き方にフォーカスした方が本書を楽しめると思う。
軍人さんだが、この人自身は戦争を全力で回避することを考えていた(パウエル・ドクトリン)。一見矛盾しているかのように思えるが、「壊した者が持ち主になる」という言葉で、好戦的な大統領に説得を試みている。結局、大統領の意向には逆らえず国連で「イラク大量破壊兵器を持っているから戦争するんだ」演説をするが、これは本人曰く「誤報だった。人生最大の恥」なのだと、認めている。それでも、過ちを認めて前進せねば、という姿勢には頭が下がる。器が広い人物だが、このレベルの人間の過ちはとんでもない結果を引き起こすことがよくわかる。だからこそ、穏健派としてブッシュの懐刀として機能したんだろう。納得。