キャシャーン考

あまりにも熱い映画である。
冒頭で巨大な大滝秀治レリーフが出てくる。
このときに気づく、
「ギャグじゃないとすれば(既成の)常識でこの作品を量るのは危険だ」
と。そして予想通り(少なくともe_c_e_tには)それまでの映画の
常識を遥かに超えたクォリティでキレイな画面が流れ出てくる。


込み入った話なのだがストーリー展開などという軟弱な概念は
不要である。そんなものは

登場人物が口で説明すれば良いのだ

という感じで、登場人物は演技などほとんどせず、

ストーリーを口で説明してくれる。



キリキリ(監督の紀里谷氏のこと)のイマジネーションは館内の
観客を置き去りにして一人で数百キロを走りきった、かのような
感じを受けた。


やたらとセピア色の回想シーンが出てくる。
複数のシーンが何度もしつこく。セピアなのにキラキラ輝いて。
しかも同じようなシーンがパターンを変えて何度か繰り返される
恐らく「巨人の星」以上に回想シーンが多いだろう。

最後の回想シーンでそれらのバラバラに展開された話題が
実はひとつに繋がっていたことがわかるのだが、それに気付くまで
しばらく時間がかかった。というよりも、この時点で

映像でストーリーは追えない

と俺は思っていた。
さらに言うと

今回のウタダの新曲のPV長いな。前フリが二時間もあるのか。
でも、椎名林檎が途中でちょっと入るなんて粋だね。

とまで思ってた。
が、しかし最後の最後で(唐沢の演説と西島の説明を借りたとは言え)映像でストーリーをまとめあげる手法を見せるあたりにキリキリの懐の深さを感じた。


確かにキリキリが伝えたいことはこちらに伝わっている。
「戦うな、赦(ゆる)せ、憎しみはここで止めるんだ」
無論、「赦せ」の対象に観客も含まれることは言うまでもない。
だから、キャシャーンみて怒ってるヤツはわかっていないのだ(泣)
まぁ初監督作品なんだからさ。突っ込みどころも目立つけど。
e_c_e_tはもうれつに次のキリキリ作品が見たいと思ったから多少の突っ込みどころは「赦す」よ。




過剰なる映画評。
読売新聞より
eiga.comより