「真剣師 小池重明」感想

ヤングジャンプ連載のハチワンダイバーが楽しい。
その中に、そんなやつはいねぇだろう、という、江戸時代生まれた手法で
プロを倒す、アマチュアの強豪(といってもホームレスのような暮らしをしているのだが)が出てくる。
このキャラクターを見るたびに、かつてテレビか、何かで読んだ伝説の真剣師の伝記を読みたいと思っていた。
wikipediaによると、小池重明という人らしい。
あとは、本屋めぐりの末、団鬼六の「真剣師 小池重明」にたどり着く。
(さすがに10年前の本なのでなかなか見つからず、川崎のラゾーナの本屋で見つけたときは小躍りしたい気持ちを抑えるのに必死だった)
家に帰るのが待ちきれず帰りの電車の中で読んでみる。
すさまじく面白い。
後半の、小池と団鬼六の関わりが特に面白い。
鬼六は嫌々つき合わされているのに、なぜか小池が負けそうになると応援する羽目になってしまう。
それは、本人いわく「老後の楽しみだと思ってたが老後の苦しみになりつつある『将棋ジャーナル』」主幹としての
売り上げを意識せざるを得ない立場もあったのだろうが、本書の面白さは詰まるところ団鬼六の人の善さに尽きるのだと思う。
「バカの番付ができればお前は大関、間違いなしだ!」
と電話を叩きつけて切るような相手に対して
「異端の強豪、小池重明の実録だけは一冊の本に残しておきたい」
という懐の深さ。
そこに小池への思いを読み取ることができ、本書の面白さに繋がっている。
ちょっと、時間を置いてもう一度読みたいと思った。


おまけ:
村山聖が中学生のころに小池重明を破ったとの記述があることに気づいた。
今となっては双方鬼籍の人なので確かめようもないのだがそれもまた伝説の一つとして興味深い。