だから山谷はやめられねぇ「僕」が日雇い労働者だった180日 (幻冬舎アウトロー文庫)

ドヤ街に興味を持った大学院生が、ドヤ街に入り、飯場に住み込み、そういう生活をする人たちの日常を横から(ではなく少し上から目線で)描いた本、これは非常に参考になる、山谷に興味がある、というのではなく、形を変えて「漂流する労働者」としての派遣社員と類似点を見出してしまう、キツイからやめる、本人はその生活を気に入っている、「職人」と「未熟練労働者」という言葉(IT系の派遣にはまだ「未熟練労働者」なんてひどい言葉は聞いたことがないが、よく実態を表現した言葉だと思う)遠い世界だと思っていたが、思ったよりもIT業界と境遇は似ている。IT系派遣さんがいきなり山谷に出入することはないのかも知れない、ただ、この後IT系が衰退したあとに何が起こるのか、そのときIT系ゼネコンで正社員じゃなかったらどうなるのか、この本から学べる教訓は多々ある。その境遇に悲観するのではなく、作者は山谷の生活を「楽だから」と著している、これをどう捉えるかは、受け手によって変わるだろう。


大昔に、工事現場でバイトしたことを思い出した、こっちは大学生のバイト、他にどっかから連れてきた30ちょっとのオジサンが居て、そのオジサンは「学生の俺」と日当が同じことを知って、あっさりやめてしまった。どっちも単純労働しかしていなかったのだから日当では「平等」だ。今三十路を超えた自分が、二十歳そこそこのガキと同じ給料で働け、と言われると、さすがにキツイ。では、自分にはハタチそこそことは明らかに違う「何」があるだろうか、所詮は本屋だかgoogleだかで入手できる程度の知識しかないのだろうか?google検索した結果をこれみよがしにしゃべるハタチの子供と比べて明確なアドバンテージはあるだろうか、いろいろと考えさせられた。