戦場カメラマンという仕事(洋泉社ムック)

金曜日の仕事帰りに本屋で見つけて、購入。終末に貪るように読んだ。
「戦場カメラマン」と一括りに言っても、大変多くのジャンルがあることを知った。写真を生業とする人の数だけ立場があり、従軍取材をするもの、戦闘場面を撮るもの、市民の視点での写真を求めるもの、時系列を追うために時間を置いて撮影するもの、角度を変えてそれぞれの方向から現実を伝えようとする。
特に気に入ったのは高橋邦典さんの「フォトジャーナリズムは死んだのかー変容するアメリカのフォトジャーナリズム事情」というコラム。かの国でも新聞の紙媒体の影響力は徐々に低下していっているらしい。ただし、メディアの形が「紙」からネットへ変容しても発表するコンテンツに代わりはないはず、実際にご本人も「フォトジャーナリズムがなくなることはありえない」との見解を書かれている。まったくその通りで媒体がどう変わろうが伝える内容の価値が変わることはない、ただ、問題は媒体の発表場所をネットへ持っていった際にマネタイズが困難ということになるだろう。今のところ、ネット上でコンテンツに対して課金モデルを構築した成功者というのは実は少ない。そろそろ彼ら「プロの仕事」に正当な報酬を渡せるだけのビジネスインフラとして成長しても良いと思うんだが。


他にも「私たちはなぜ戦場に行くのか」座談会、不肖・宮嶋先生の「不肖の後輩より一ノ瀬泰造先輩へー今の日本にホンモノの戦場カメラマンはいません」という熱いトリビュート、奥様の目線からの橋田信介さんの話など、どれもが興味深く、値段(1200円)以上の価値はある。
おまけ:
本書と併せてTEDのナクトウェイの話は聞いておきたい。20分ぐらいだが、本書の根底にある「なぜ、戦争取材が必要なのか」を明快に説明している。