原発労働記[講談社文庫](堀江 邦夫)

本書のもととなった原発ジプシーを知ったのは高校生の時に担任の教諭からだった。それ以来、チャンスがあれば読みたいと思っていた本についに目を通すことができた。
本書は原発ジプシーから、

例えば仲間の労働者たちの詳細であるとか、彼らがいだくさまざまな心情といったものについては、『原発労働記』ではかなりの部分削除しております

ということで作者の言葉を借りると似て非なる作品ということらしい。とはいえ、多くの情報をこの本からは得ることができる。
下請け労働者の視点からの「正社員の扱い」であるとか、現場にて作業をする労働者の危機感の薄さ、そして借り側の危機管理意識の欠如、とはいえ、これらのゼネコンと相似形の業務体系は、本書が出版された79年には目を引いたかも知れないが、今となっては残念ながら普遍的にどの業界でも見られる景色となってしまった。これはこれで問題なのだけれど。


本書には多くの驚くべき点が記載されている。
通常時であっても「作業者は被ばくすること」が前提
健康な人しか作業者として採用されないこと
よく現場を知る者は「俺がやったほうが早いんだけど、俺がやるとすぐに線量がパンクするから指示に回る」という現実(つまり熟練者は作業しない/できない)
本当に放射線が強いエリアでは「外国人労働者の存在」があるということ。
その外国人労働者の詳細について、本書は語らないがこの時代はそういったGEの関連会社が人を集め高給(ハイリスクハイリターン)で「ヤバい箇所のメンテナンス」が可能だったらしい。
リアルタイムで進行するスリーマイルの事故について、末端の現場作業者は無関心であること


これよりも過酷な現実と向きあう福嶋第一原発での現場作業者の事を思うと本当に頭がさがる思いでいっぱいです。