ブーメラン 欧州から恐慌が返ってくる

マネーボールを読んでから、マイケル・ルイスの他の著作も見てみたいなと思って本屋に入ると売っていたので買った。金融の本とか確かめもせずに買った。
で、感想。面白い。
サブプライム禍の後の、アイスランドギリシャアイルランド、ドイツ、の状況が各章ごとに書かれている。どの章からもその国の国民性がわかる。アイスランドがなぜ、金融の国になったのか、なぜ失敗したのか。ギリシャではある宗教家(の仮面をかぶったビジネスマン)を軸に話が進む。金がないのに、税金を集めないという、やはり、ギリシャ人のオカシな部分が描かれる。it's a greek to me とは本当によく言ったものだと思う。変な選択をして、耐え忍ぶことを選んだアイルランド。「流動性の問題だ」という言い訳の恐ろしさ。なぜか、スカトロから入ることでドイツ国民性の真髄に迫る不思議さ。サブプライムの入ったCDSを最後まで買い続けた馬鹿正直さ。規律を重んじるってそういうことか?
どれも、面白い。というか、怖い。でも、面白い。
でも、本書の本当の恐ろしさは、冒頭にある「日本とフランスがデフォルトになることに賭けた」話だろう。
そう、これらの国の話、全然、対岸の火事ではない。
未だに、増税に及び腰なこの国は、借金がガンガン増え続けているのに、人口は減っていくことがほぼ確定している。働ける人の数が減って、稼ぎが減ることは十分考えられるこの状況で、借金をまだ増やす。債務がほぼ国内に絞られているから、大丈夫だ、というのは「借金したっつっても母ちゃんか、身内からしか借りてないから大丈夫。だからまた、貸して」と、言っているようなもんだ。わかっちゃいるけどやめられない。本当にダメおやじまっしぐらな状況なわけで、よそ者に、「あいつ絶対破産するぜ」とデフォルトが起こる方にベットされても、さもありなん。という感じはする。
本書で描かれているどの国も「変なことしてるなぁ」と思いながら読み進めるのだが、ふと、気がつくと日本だって似たようなもんか、と、気づいてしまうときがある。本当に嫌な気分になってしまう。
「この末期症状に及んでもこの国の人達は政治に興味を示さなかった、次から次へ新しい政権へ目移りし、長期的展望を描く政権を選ぶチャンスを自ら放棄し続けたのだ。短命政権は支持率を維持することに精一杯で、その場しのぎを繰り返すたびに借金を重ねていった。呆れた無計画ぶりであった」
とか、本書に書かれていても全く違和感がない。つまり、本書の続きに、日本が書かれていても違和感がない。マイケル・ルイスが続編に日本を選ばないことを願うばかりだ。