証言 班目春樹 原子力安全委員会は何を間違えたのか?

原子力安全委員会という組織はもう存在しないそうだ。かつて、speediを公開していたWebサイトへ行くと、経済産業省の「旧原子力安全・保安院のホームページは閉鎖いたしました」にリダイレクトされる
http://www.meti.go.jp/nisainfo/info.html
では、原子力安全委員会は、経済産業省の所轄だったのか?というと、違う。内閣府の直轄となっていた。
http://www.nsc.go.jp/
本書の主役である、班目春樹氏はここ、内閣府原子力安全委員会の委員長であった。では、あの当時メディアをにぎわせた「保安院」の「インチョウ」は誰なのか?
実はメディアには出てこなかった。故にバッシングされることもなかった。本書では、その訳が語られている。
現地での対応とは、別に、官邸側、霞ヶ関付近で、何が起こっていたのかを本書は明らかにする。
経済産業省や、文部科学省の思惑に振り回され続け、表に出さされ続けていたらしい。

私が見る限り、あの非常時に実際に各省庁間で繰り広げられたのは、もっぱら責任の押し付け合いでした。そんな霞ヶ関でわれわれ原安委は「底なしのお人好し」と思われていたようです

やはり、当事者の言葉は聞くものだと思う。と、同時にあれだけの原子力関係の役所があって、専門家は殆どいなかったことにも驚く。これでは「保安院経済産業省天下り機関だから、詳しいことはよくわからないんだろうな」と思ってしまう。
その他、特に興味深かったのは本書に出てくる菅直人総理(当時)の評だ。さすが、一緒にヘリに乗って福島第一原発へ連れて行かれただけあって、人柄もセットで説明してくれる。ちなみに、時系列的に福島第一原発に到着したときには、1号機がメルトダウンしていたらしく(後に判明)菅直人総理ご一行は被爆していたそうな。(というのを班目氏ご本人は、専門的知識で理解しつつ覚悟の上の同行だったとか、涙を誘う)
その後、官邸の「政治主導」の右往左往に付き合わされる姿にも確かに、なぜこの人がこんな仕事したのだろう、と思わせる内容となっている。

原発の安全規制を監視する原安委が、最後の仕事として、再稼働を手伝うことになるとは、思いもよらないことでした。

地震後の対応についての、工学的な知見での解説として本書は貴重な書だと思う(政府の事故調査報告書もそうかもしれないけど)



今年は、各部門の当事者の本を読んだ。随分と立体的に当時の状況がわかってきた。情報公開って素晴らしい。
・官邸(班目春樹氏)
(上記)
福島第一原発(東電側)
http://d.hatena.ne.jp/e_c_e_t/20121219
福島第一原発(協力会社側)
http://d.hatena.ne.jp/e_c_e_t/20120903
他に、菅直人その人が書いた本もあるにはあるが、、どうしようかな。