通訳日記 ザックジャパンの1397日の記録

そんなに、サッカーに興味は無いのだけれど、無かったはずなのだけど、貪るように読んだ。何より、試合展開の記載が淡白なのが良い。
つまりは、サッカーじゃなくても通用する話が満載なのだ。
既に、もうザックジャパンの結果は知っている。ブラジルで何が起こり、終わったのか。結末を知っていて物語を知りたいと思うだろうか?知る意味は、本書が教えてくれる。読めば分かる。結論よりもそこに至る過程に意味がある。


終戦に学ぶことは多数ある。俺はこの本を新撰組や白虎隊に似た話だと思って読み始めた。全く違った。ザッケローニがどれだけ日本人選手を愛し、期待を込め、悩み、コミュニケートして、大人扱いして見てきたのか。そして、チームへの一貫性を保つために、何を語ったのか。
ワールドカップまで残り1年の2013年の話が大変興味深い。何をしたら良いのか焦る選手と、どっしりと構えるザック。徐々に方向性がずれて行く。

個のクオリティではなく、チームのコンセプトが共有されていないことが問題だ。(2013/6/1)

課題認識も鋭い。結果を知ってしまった2014年の時点では、なるほどと、思えることをワールドカップの1年以上前から取り組んでいる。

このチームにはメンタル面で2つの課題がある。1つはフレンドリーマッチで集中力を欠いてしまうこと。もう一つは完全アウェーの戦いで怯んで実力を出せないこと。この2つは必ず修正したいと考えている。(2013/6/18)

もうこのとき、ザッケローニにはブラジルの結果の姿が見えていたのかもしれない。そして、ここからはチーム内と方向性のずれに苦闘するザッケローニの姿があった。

本当に心の底から、我々のサッカーを信じてやっているのか? 私はそうは思わない。もっとトライすべきであって、深くとことんトライした上で、監督である私に意見を言ったほうが良いのではないか?(2013/10/12)

一度、迷いが生じるとこんなにも修正が難しいものなのか。
代表メンバーは招集できる時間に限りがあり、練習できる時間も多くは取れない。その限られた時間の中で修正をするのは本当に困難だと、よくわかった。
代表招集までの間隔が空くと、前回教えたことを忘れてしまうのだし、毎回、少しづつ辛抱強く積み上げて行かないと行けない。だから、メンバーをコロコロ変えるのも難しい。必然的に中心メンバーを固定しないと「チームとして戦えない」
4年間が短いという意味が分かる。でも、この4年間で強くするために何をしてきたのか、こういう記録が残るのは良いことだと思う。
心の奥底から、ザッケローニ前監督にはご苦労様と言いたい。
不覚にも何度か泣いてしまったよ。