将棋の子

ハチワンダイバーの影響だと思うが、奨励会に関する書籍に目が止まるようになった。
最初に読んだのは、オール・イン 実録・奨励会三段リーグで、彼の世界の恐ろしい世界観を持て余すこと無く伝える凄い本だった。
で、どこかで将棋の子という、奨励会を去った人を書いた本がある、ということを知った。ずっと読みたいと思っていて最近、武蔵小杉の本屋で見つけた。
一気に読み終えた。
この読後感をなんと言えば良いのか。才能もあり、将来を嘱望されていたはずの天才少年たちの、青春期を奪うということがこれほどまでに残酷な結果を生むのか。本書は、将棋は何も奪ってはいない、というが、それはその通りかもしれないが、修学機会を「気合いだ」と言って喪失し、当然のように同世代が就職活動する時期に三段リーグに専念する。社会に放り出された時の状態は、博士課程単位取得後退学よりも、ひどい。何しろ、高校の単位すら、ない、そういう選択をした天才だから。いや、元・天才なのか。
将棋以外にやることを知らず、親の遺産をギャンブルで使い切るあたり、社会生活不適合者と呼ぶ以外の言葉が見当たらない。
何かに打ち込む、という行為に疑問を感じ、天才の生み出す生産性って何だろうと、考え込んでしまった。


本書の冒頭で、奨励会を去った、今泉健司氏について触れておきたい。
「桐谷さん(株主優待で有名になってしまった人)」の門下で、再挑戦をした彼は、2015年から四段になる。
本書は終わっても、まだ、物語は続いてる。