ビッグデータ・ベースボール 20年連続負け越し球団ピッツバーグ・パイレーツを甦らせた数学の魔法

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先週末の日経新聞の書評で見つけて本屋に買いに走った本。
いやー、すごい。ため息が出るほどにスゴい。タイトルに数学とあり、確かにセイバーメトリクスの本なんだけど、本書が素晴らしい、いや、パイレーツが素晴らしいのは、データの分析屋を遠征に帯同させ、選手との距離を縮め、コミュニケーションを密に取ったことであろう。
いかに素晴らしいデータ分析屋を雇っても、それを実行部隊である選手に実践させないと意味が無い。実践させるには、データの意味が分かる形で伝えないといけない。
本書で本当に素晴らしいのは、人に情報を伝えることの難しさを正直に描いている点だと思う。
クオンツが作るデータをトレーダーが使えない、だとか、制服組と背広組の意思疎通がどうだ、とか。似たような話は他の業界でもあると思う。分析できるインテリジェンスがあっても、それを活用できる組織は作れるかどうかは別問題だ。
鍵はいつでも帯同し会話できる環境を作る、コミュニケーション不全が起こらぬように、MITを出た分析屋がその経歴を鼻にかけず、顧客(選手)の話に興味を持って一緒に検討する。これが良い方向に働くカギか。


パイレーツは、ツーシームを投げさせ、内角に沈む球を活用し引っ張らせてゴロを打たせる作戦を取った。そのためにゴロが正面に飛んでくるような守備シフトも作っている。これが機能したようだ。一番面白いと思ったのは、ピッチフレーミングという概念だが、それは本書を読んで欲しい。本書の最期には既に対抗策が語られていて、そこではゴロではなくフライを打つバッターをかき集めるビリー・ビーンGMの話が出てくる。マネーボールはリアルタイムで続いていて、、もう別の競技に進化したかのような錯覚を受ける。


日本球界にもpitchf/x導入されないかな。やってることは、90年代にヤクルトがやっていたID野球の延長線上にあるんだが、ただ、レベルが桁違いに違うだけで。