ボビーフィッシャー

[書評] 完全なるチェス―天才ボビー・フィッシャーの生涯
たまたま、何かの本で羽生善治が出国のために時の総理(小泉)に手紙を書いたとか、そんな話を知って興味を持って読んでみた。チェスのチャンピオンの話。
いやー、すごい。強い、ただ強い以上に、濃い人生。
IQが高いのに、間違いなく天才なのに、幸せにはほど遠い生活をしてしまう。それは喋るたびに舌禍を起こすからなんだが、読んでて途中で何度も本を閉じたくなってしまうほどに人格的に問題がありすぎる。ただ、圧倒的にチェスは強かったので、政治に利用されたのは悲劇なんだろう。


これって、幼い頃の教育が影響しているのだろうか。
母親は、教育の機会は与えているのに、母親自身の方が勉強が好きという、これもなんだか複雑な環境だと思う。本来受けるはずの寵愛が全て、チェスの才能というパラメータに全部変換されているんじゃないかと穿った見方をしたくなる。
本来、学校で教育を受けるべき期間をチェスの研究に費やし、後年、勉強したくなって宗教にハマるって、もう、なんというか目を覆いたくなる。賢さの使い方を圧倒的に間違えている。
晩年、本屋や図書館に通って歴史や哲学には詳しくなったが、いつまでたっても陰謀論から抜け出せない。圧倒的にサイエンスが足りないように思う。学校教育って大事なんだなと感じる。
「将棋の子」や、「真剣師小池重明」に似ているが、それよりもドス黒い読後感なのはボビーフィッシャーの振れ幅が異常にでかいからだろう。世界チャンピオンになるってそういうことか。