東スポ黄金伝説

東スポの記者だった「島田」の目線にて物語は進行する。「マドンナ痔」や昭和天皇崩御の翌日の一面「猪木、流血!」など他の追随を許さない強烈なスクープの裏話の話もあるが、どちらかというと社内の人事の話が中心となって話は進む。徐々に脆弱だった会社基盤が「立派な会社組織」になっていく。その過程で最初の「井上」社長の入院、逝去、、それを境に社内の権力抗争というか、居心地が変化していく様子が描かれてゆく。この創生期を支えた社長の器のデカさがいなくなってからわかる。楽しいヨタ記事を出している内側は楽しいばかりではなかったようだ。人材の流出が止まらず、次々と社外に「東スポ」出身者が増えてゆき、業界全体に人材を配置するようになる、もはやそこに創生期のころの脆弱な姿はない、そして最後には「島田」も去り、物語は終わる。
(ちなみに、最後には「江尻記者」という名前が出てくる、あぁ、あの夕刊フジの人か?、と思った瞬間に嫌な気分になった)
最初には「志半ばに去っていった、すべての記者に捧げる」との一文がある。語り部としての責務を聞いているようで、黄金期に至るまでの過程は、エンターテイメントでもある。「社史編纂」となると退屈そうな話題になるが、元社員が暴露本みたいな形でこういう話を出すところが東スポ東スポたる所以かもしれない。思ったような内容ではなかったが、楽しく読めた。