日本「半導体」敗戦 (光文社ペーパーバックス) (単行本(ソフトカバー))

元日立の半導体技術者からの半導体業界の敗因分析の書。これはすごい内容だった。「根拠なく技術には自信がある」と思っていた著者自身が、世界の他社とのベンチマークを通して業界全体の問題点(過剰技術、過剰品質)をあぶり出す。「原価に合わせて品質を落とす方法が分からない(だから製品を安く売ることができない)」生産者の姿や、「過去の製造工程にプラスすることしか知らず(そもそも必要な工程なのか必要なのか不要なのか確かめもせずに)工程を追加して製造原価が高くなる」生産者の姿は、他業界にいる自分にとっても身につまされる思いである。
「利用するつもりで参画しないと意味がない」事例や「人不足のためすべての工程を理解せざるを得なかった」事例など、本書の中でもエルピーダにおける三菱出身者の姿、セリートにおけるロームの姿は大変参考になる。他にも過去の栄冠と現在の状態の区別が付かない組織(未だに自社は世界一だと思っている)などの組織の病の事例が凝縮している。優秀な人をつぎ込んで、過去の栄光にすがりついたのは何故なのか、無駄なように見える過去の手法を疑う人間は何故組織からはみ出してしまうのか、逆に言うと、組織からはみ出さずに過去の栄光を捨てられる組織はどうやればできるのか(エルピーダのようにカリスマの出現を待つしかないのか?)、本書には書かれている点もいない点についても大いに考えさせられた。