トラブルなう (ナックルズ選書)久田将義 著

物凄い書物。「はじめに」で信じられないような金言が飛び出す。

はじめに
編集者とは、恫喝、脅迫、恐喝、暴力、拉致、などに耐えうる者のことである

え?編集ってそんなに大変な仕事なの?と思ったらもう、この著者の土俵に載せられている。もう此処から先は、著者が土俵の上で、恫喝され、脅迫され、恐喝され、暴力され、拉致された記録をただただ読むしかない。相手だって、ヤクザから、政治家、ライターまで、なんという至福、もとい、不幸な、いや、面白い、著者の方には申し訳ないが、引き込まれるような面白さというか、変な魅力が字面と行間に満載でなんというか、凄い書き手だ。
何が素晴しいって、トラブルに対して向かい合う真摯さと、それ以外の何かが入り交じった著者自身のパーソナリティが素晴らしい。
この辺にこの著者の方の人間的な魅力というか、特筆すべき部分があって、大変な気概ある人物だとわかる。

(部下の作ったトラブルに遭遇して)
複雑な思いだったが考えて見れば僕は彼の上司である。部下のミスは上司が被るのは当然だ。
やるしかねえな。
僕の義務である。そして人間を人間たらしめるのは義務感だと思っている。絶対このトラブルは僕で収める。部下が嫌な思いをするのも避けたかったし、上司、社長にケツをもっていくなど僕はこれっぽっちも考えなかった。腹をくくるしかない。

とはいえ、これで、ヤクザやら政治家やらと相対せる根性は普通の人は持ってないよ。雑誌編集とは本当に壮絶な仕事なのだな、と思ってあとがきを読むと

本書は編集者のある一面を突出した形でまとめたあくまで特殊な例です。

とあって、安心したような、この人が出世していくのがよくわかるような。


SI(IT)の世界でも、凄腕のプログラマが居ても、トラブルは起こる。そういうとき、こういう意識を持って粘り強く顧客と、開発者の話を聞き「ここで終わらせる」という意識をもって妥協点を探る能力は必要だ。
「人間を人間たらしめるのは義務感だと思っている」
この言葉は素晴らしい。俺も言ってみようかな。
おまけ:
「トラブルなう」(久田将義/著)出版記念トーク
http://www.ustream.tv/recorded/13639887
これもまた面白い。