プロ野球 歴代監督の「采配力と人間力」 (宝島SUGOI文庫) [文庫]

今度は、監督の話。川上監督と西本監督が大正9年生まれの同期生で、互いに認め合う存在だったという話が一番興味深かった。川上監督、仰木監督ときて、西本監督の話で涙が出そうになる。一節を引用すると

阪急時代の上田利治、近鉄時代の仰木彬。いずれも地味で選手実績が薄く、参謀タイプと思われていた両コーチを公認に指名、名監督として名を残させることとなった。
(中略)
広岡達郎は「西本は決まった参謀を持てばもっと長く監督をできた」と言っていたが、西本は自信の延命など考えず、部下をこの世界で食べていけるように育てることを重視していた。

この人のエピソードは本当に情に訴えるものが多い。では、後任の仰木監督のエピソードではこれが気に入った、パンチ佐藤に引導を渡す瞬間の話である。

「おまえは守備は下手だし、足も遅い。レギュラーは無理だ。ただ、監督として左の代打の一番手としておいておきたいが、調べさせてもらったらお前の給料は800万じゃないか。嫁さんももらったんだから、もっと稼がないと駄目だ。芸能界に入ればお前はレギュラーになれる。今の3倍4倍は稼げる。だから早いうちに見切りを付けた方がいい」その上、僕ごときの引退会見に同席までしてくれて、そしてまた一番言って帆いいことを言ってくれたんです。「今年はパンチのおかげで5、6試合逆転した試合がある。撃つだけじゃなくムードメーカーとしても力になってくれた」と。押されると弱い心のスイッチをばっちんばっちん通すもんだから、僕も気持ちよく引退することができました。

この後、この監督の教え子から梨田監督が生まれている。近鉄ラインは不滅か。
他に古葉監督、藤田監督なども情の人として描かれている。特に第一次藤田政権の話は初見の話が多く興味深かった。で、この本では、野村監督は戦術の人として描かれている。
どの監督も、共通しているのは、人間的な器の大きさを感じるところか、そう振る舞えることが監督に必要な能力と言うことなのだろう。