Think Simple

本書は、Appleへ出入りしていた広告代理店の話。ではあるが、それ以上の話でもある。信じられないことにAppleではジョブズ広告屋の意見を直接聞いていたらしい。そして、他の社員には先に聴かせない(CEOはこれを喜ぶ、と社員が誤解して余計なフィルタを掛けるのを嫌った)らしい。
考えてみてほしい、上場企業で自社のマーケティング戦略を一緒に考える社長を。
「そのために、広報部門を作って、選任の担当者に任せる」
「自分は広報担当者の報告のみを聴く」
とするのが、普通は優秀な人間とされる。それが普通だと思う。そういう価値観では、社長が貴重な時間を割いてマーケティング屋の打ち合わせをしたいとは、思わないだろう。
CEO自らが、考え、アイディアに駄目だしをしてマーケティングの方針を決める(iMacというネーミングに二度駄目だしをした話が大変面白い。ジョブズは「MacMan」がsonyみたいで素敵だと語ったらしい)
時折出てくる、インテルマイクロソフトやデルとの比較が面白い。特にデルがツボにはまった。


本書はいろんな読み方ができる。
プログラマーとして、本書を読んで刺激され、モチベートされなかったとしたら、それは悲しいことだろう。本書はマーケティングの本だが、相手を喜ばせ、相手を驚かせるための戦術を書いてある。プログラムを書く際に誰しも考えそうなことだ。本書が素晴らしいのは「シンプル」の強さを説明していることだ。相手を喜ばせるために、多機能になり、相手を驚かせるためにボタンが多いシステムを本書は最もダメな例として扱う。
日本語だと「単純であり続ける」あるいは「詫びた風合いを持つ」
これは本当に難しい。利便性の誘惑に負け、フラグやボタンや選択肢を増やしそうな誘惑に打ち克つのは難しい。本書はこの状況に立ち向かうためのたくさんのヒントがある。読んでよかったと思う。



おまけ
PCvsMacのキャンペーンを著者はえらく持ち上げているが(そりゃ自分がやった仕事なのだろうから)あの、CMがcoolで、macを使いたくなるような宣伝だったかというと、俺は疑問なんだがな。