父 吉田茂 (新潮文庫) [文庫]

著者は麻生和子吉田茂の娘で、麻生太郎の母親。
外交官の娘として戦中戦後を随分とリベラルな生き方をされていたようだ。この娘夫妻が支えて(文字通り経済的に支えて)吉田茂が仕事ができていたことがよくわかる。金に無頓着だが、婿殿の麻生の財力でなんとかする、という、どう考えても褒めどころのない政治家に見えるが、それでもサンフランシスコ講和条約を締結し、その後の経済発展の礎を作った功績が当然のようにすばらしい。サンフランシスコに向かう前の悲壮な覚悟など、当事者の内面を描いてある点がすばらしい。上流階級の総理大臣の話なのだから、当然かもしれないが、全体的にどこか、浮世離れした文章であり、今の政治だと、よほど注意しないと民衆を敵に回しそうな政治家になるんだろうなぁ、と思った。麻生太郎が醸し出すオーラの源はこれか、と、納得。そう思うと麻生太郎は母親よりはマイルドに見える。