日本の「情報と外交」 (PHP新書) [新書]孫崎 享 (著)

孫崎氏の本は読んだことがなかったのだが、上記「動乱のインテリジェンス」で佐藤氏が触れているのをみて、読んでみて、大当たり。
著者は外務省で情報畑を歩んだキャリアだったとのこと。著者自身の回顧録として書かれてある。イランイラク戦争NATOベオグラード空爆オイルショックニクソン訪中、、、これらの事象について著者自身の目線で解説を加えていく方式で本書は進む。文庫本のための前書きとあとがきに、2012年末の状況を踏まえた話が出てくる。
本書が素晴らしいのは、著者の文章力に負うところが大きい。著者自身が文章を人に伝えることの重要性を説いている。

情報分析は分析で終了するのではない。情報は政策に反映させることを目的とする。政策に反映できなければ意味がない。

なるほど、と思う。単なる分析上手ではないことがわかる。

重要なことは「得点稼ぎ」の外交政策がだされるときには、冷静な情報分析は不要である。
(中略)
外交政策で指導者に都合の良い政策を提言するときには、別に国際情勢がどうなっているか調査する必要はない。

など、人によっては怒り出しそうな話も遠慮なく出す。他にも情報マフィアと付き合えだとか、空気を読むな、だとか、、こんなこと言ってて大丈夫なのかと、思うほど。
著者の説明の姿勢は本書に至る所で、鳥瞰的であり、慎重だ。日本びいきの目線ではない、もう少し広い視野でとらえて客観的な説明をしている、しかし本書の結びでは「我が国独自の国益があるのか」を論じており、興味深い。