祖父たちの零戦

零戦が、設計されテストされた頃から、終戦、戦後まで、零戦の周囲に居た人たちの群像劇。
真珠湾攻撃から、太平洋戦争が始まって半年ぐらいは最強だった零戦。しかし、終戦に近づくにつれ、アメリカの戦闘機に性能で負けるようになり、明らかに劣勢に立たされた状態でそれでも前線に出続ける零戦まで。
余す事なく、全盛期から衰退期までの零戦を知る事ができる。


熟練のパイロットが若手に指導する際のコメントが興味深い。実戦を文字通り生き延びるためのアドバイスは重い。

空中戦は絶対に水平直線飛行をするな。常に機体を滑らせていないと敵機の良い標的になるぞ。奇襲を受けたら零戦は一発で火がつくからな。

こうしたアドバイスも虚しく、順々にパイロットが減少していく。圧倒的な無勢の中の絶望は想像するに余りある。
次から次へと、同僚が亡くなってゆき、終戦を迎えた彼らの「戦後」の生き方にもフォーカスがあたっており、勉強になった。殆どの人が「戦時中の体験について語りたがらない」事にも驚いたが、その封印されかけた情報に本書はアクセスできる。大変良い本だと思う。