国家の命運、と、インテリジェンス人間論

著者は外務事務次官だった、藪中氏。北朝鮮との6者協議など当事者の生々しい話があるが、全体としてはドライな本で、暴露ネタはない。交渉の最前面に立つ者の苦悩とあるべき姿が書かれている。北朝鮮との対話の難しい、というのは報道で聞くが、当事者の見聞きした経験から、本当に中国ですら手を焼く存在である事例が紹介されている、こういう情報は貴重だと思う。また在任中から何度も報道されてきた有名人なので違和感は感じなかったが相当に優秀な方であるという印象を受けた。大変有名な対外交渉にいくつも関わっており、本当に日本の外交の歴史を作った稀有な個人だということがわかる。
佐藤優(こちらは在職中は課長級だったらしいので次官とはずいぶんと格が違うが)もそうだが、こういった優秀な人のガチに領土問題/領土交渉に取り組む姿が後日談という形式で知ることができる。日本は素晴らしい。

続けて、やはり元外務省の佐藤優氏の本。例えるなら、社長の書いた本の次に、課長の書いた本を読むようなものか。藪中氏の話よりも政治家の名前がよく出てくる、これは、藪中氏が政治家と合う機会が少ないわけではないだろう、政治家と接触する機会が限られており、その度に濃密な時間を過ごしたため、課長級の佐藤氏の記憶に留まっているのだろう。橋龍・森・小渕など小泉以前の首相との対話からはこの人が本当に「専門家」として政治家から重宝されていたことがよくわかる。
鈴木宗男についての文章は本人は難産したと書いているが、マスコミ報道の誤解を解くほどの魔力は秘めていないように思う。国家の罠の方が魔力があるように思える。
と、書いたところで気づいた。さすがにネタ切れなのか国家の罠、自壊する帝国、獄中記、その他いろいろな著作を読んだあとにこの本を読んでいるので、どっかで聞いたような話もいくつか混ざった感じがする。後半は得意の聖書ネタで、前半の政治家の話から、一気に飛ぶ。この玉石混交な空気が本書の魅力か。

文庫本になっていたのを見つけて読み始めた。ようやく半分ぐらい読み終えたか、まだ満映の話は出てこない。ちょっと、、飽きてきそう。とりあえず「主義者殺し」のレッテルが誤りなのはわかった。